2011.04.25 Monday 01:39
哲学と音楽
30 Years With(out) Ian Curtis Transmission 80-10
イアン・カーティス亡き後のJoy Division。それは、New Orderではなく、このコンピレーションアルバムに収録されたアーティスト達によって確実に、脈々とその魂は過去から現在、未来へとつながっている。ほとんど知られていないアーティストが多いが、どの曲もじつに良い。なかなかの完成度であると思う。Cocteau TwinsのギタリストRobin Guthrieソロ名義の名盤"IMPERIAL"やRoger Eno、Roedelius等と共に、読書をするときのBGMとしてよく聴いている。
自殺によるカタルシスはあるのだろうか。
イアン・カーティス、ジミ・ヘンドリックス、シド・バレット、ジム・モリソン、シド・ヴィシャス、そしてRozz Williams...自殺と縁があるアーティストたち。彼らのような希有なセンスを持つ天才は繊細な刃との戦いなのだ。
それだけに自らが抱える孤独、葛藤、軋轢、妄想、
ありとあらゆる事が一気に崩れる時、繊細な魂は揺らぎ、
揺らぐ…
カタルシス…。それは、アリストテレスの「詩学」によれば、魂の身体からの排泄あるいは魂の浄化を意味する。いわば悲劇の効用として論じたものであるが、その効用とは何であるか?
それを考えると夜は尽きない。 ともあれ、抑圧されていたものを浄化する作用のひとつとしてカタルシスがある。ギリシャ悲劇が生まれた背景には間違いなくカタルシスを好む観客がいたからだとされるが、 そういう意味では人類にとっては現代も、太古もさほど変わりはないようにも見える。 日本で生まれた「喜怒哀楽」という概念だけでは補えきれなかった概念、それがカタルシスである。
誰の心の中にもある無意識の内に抑圧された恐怖や痛み、悲しみ、苦痛…。それらがカタルシスによって解き放たれる時、新たな世界が目覚めるのだろう。
私は自らの存在意義をつねに考えている。生きるとは何か? 行動するとは何か?
愛とは何か?、そして…
人類の英知、哲学は、時代によって古びない。音楽も然りである。
BGB(Background Book) : ジャン・ポール・サルトル「水いらず」